ニューキャノンのラリーのアパートにはよく行き来していて泊まることもよくあった。たいていは何人かの彼の友人が遊びに来ているので友達をふやすにはパーティと同様に最良の場所でもあったわけだった。ラリーには、ルームメイトのジェフがおり彼も一度合うと好きになるなかなか良い男で毎週 彼とチェスをやるのも楽しみだった。その他彼はいろいろな室内ゲームに興味を持ち、ある日「碁」を教えてほしいというのでうろ憶えの知識で打っていたら負けてしまった。彼はある程度知っていたのだ。チェスもなかなか強 く地区の大会にも賞金めあてで参加していた。彼はまた、アメリカ人によく いる自然主義者でホウレンソウを生のまま食べてたりしている。大豆食品にも興味があり、将来は菜食主義者になるつもりだといっている。彼の職業は、機械部品の設計だそうでサラリーマンのようだ。しかし一度もネクタイをしているのを見たことがないし、毎日のんびりやっているようなので、これか ら判断するのは気がひけるがエリート部門ではないらしい。(アメリカでは エリートと一般と各自認識して仕事をする傾向が強いように見える。)そし後日電話をしたら彼は病気で入院してしまったのである。内臓の病気か、足でも折ったのかラリーのアパートに出向いて聞いてみると「メンタルな病 気だ」と云った。しかし一週間前は私と一緒にチェスをしたりしていたのだ が。彼がアル中であったということは知っていた。週に一度ぐらいづつアル 中クラブのミーティングに出かけて行って自分たちの意志確認と他のアル中患者へのアドバイスなどをして活動しているグループだとジェフ自身から聞かされたことがあった。彼はかつてアル中患者だったが現在はもうカンバックしたと云っていた。そのグループのメンバーは秘密だそうで(就職に不利 になるので)独自の活動をつづけているということだった。彼はトランキライザーのような薬をつづけて医者の処方でつづけて飲んでいたが、「治って一年も経っているし薬を飲むことはない」と周囲の友人たちがいうので止めたとたんもとに戻ってしまったということだった。実際アメリカにはアル中患者が多く大都会には必ずいて旅行者などに物を売りつけのみしろにしよう とする。高校生でもすでになっている子供もあり幼児期の飲酒癖が原因するらしい。テレビの番組でもこの問題をABCネットワークが取り上げたのを観たことがある。その後ラリーと話したとき、彼も数年前、精神的に不安定 な時期があったそうでアメリカではこの病気はとても多く社会構造にも問題があるのではないかと彼はいっていた。彼はアパート暮しだが両親は近くに住んでおり、父親は化学会社の部長クラスで物わかりのとても良いユーモアのわかる人で母親はそこぬけの明るい若々しい感じのこれも親切な人で毎々 ディナーに招いてくれた。兄弟3人でめぐまれた中流家庭というムードであ る。原因を聞いてみたら「将来の不安感」だというようなことをいっていた。 ラリーは大学を出て数年会社に勤め今は楽器屋の店員たまに夕方ギターを教 えたり歌を歌ってかせいでいる。激しい競争社会がそうさせるのだろうか。 しかしやればやるだけの成果が出しやすいのは、アメリカの良い面だとも思 うが。これは実際は社会に出てお金をかせぐ身になってみないと解らないだ ろう。アメリカン・ドリームは存在するが手にするのはほんの一部の人たち だしその失望も大きいのかも知れない。ラリーはその後より敬けんな気持ち を強く持ったという。彼の両親はプロテスタントで比較的熱心なクリスチャンである。ラリーは「だれでも、何の宗教でも一つ信じる者を持たないのは不自然だ」といい、私の不信心さにやきもきしている。また、アルコールに関しては、私の印象ではアメリカ人はイギリス人,欧州,日本人よりあまり飲まないのではないだろうか。そのかわり飲む人は日本人より健康的ではな いのみ方が多いのではないだろうか。ネガティブな飲酒であれば量も多くなり悪質なものとなるるしかし、それにしてもあの多くがフレンドリーで明るくそしてそんなに酒を飲む機会をみない(と思う)アメリカ人の中でアル中とメンタルディズースの多い現象がぴったりあてはまらないのだ。
アル中とメンタルディズース

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