ムトラックとは米国鉄道旅客輸送公社のことで主に東部を走っており、
私の下宿していたスタンフォードからニューヨークのマンハッタンに出かけるときに利用していた電車である。この間急行列車が約30~50分おきに走っており約45分間でマンハッタンのグランド・セントラル駅に到着する。料金はラッシュアワーは高く昼間,休日は安い。それでも片道約$3.00 ある。スタンフォードもそれほど小さな街ではなかったがニューヨークは世界の大都市、世界のトップクラスの人と物が集まっている。必要な物の買入その他見学などひんぱんに出かけることが多かった。ただ治安の悪いのは有名であったし、夜中までいなくてはならないときは必ず友人たちなどとさそい合って一緒に行くことにしていた。ニューヨークの話は次項にまわすとしてこのアムトラックの通勤電車はなかなか乗りごこちが良く、室内はきわめて豪華でおちつきもある。日本とは異いラッシュ時間でも各車両に2~3人立つ人がいるくらいでほとんどはゆったりとした肘掛け椅子にすわりマン ハッタンへの通勤圏で、朝夕のラッシュアワーの様子は一見大会社のエリー トサラリーマンらしき人たちで満席になる。そんなときジーンズにセーターすがたは私ぐらいのもので他はスリーピースにアタッシュケースを持ち、銀ぶちめがねに口ひげ脇にはニューヨーク・タイムズ紙というのが一般的だ。ブルックリンから地下鉄でマンハッタンに通うサラリーマンとはだいぶムードが異う。そしてこんなだから黒人もほとんど見かけず、いてもやはりスーツに身をかためたインテリア風である。バスの乗客は反対で黒人がほとんどのことが多いので対称的である。駅に改札口はないので車掌が切符を検札に来て廻る。この車掌さんたちが親切で気持ちがよく切符にハサミを入れるときは“Thank you”を必ず言うしたまに車内がすいているときは“ How are you?”をいうこともある。ハートフォード,ボストン行きなどの長距離の列車に乗ると駅で降りるレディの荷物を車掌が切符切りをやめて搬んであげている。チップは受け取ってないようなのでサービスは 満点だと思った。後でヨーロッパを旅してみて気のつくことはアメリカとは対称的にこのようなこまかい心づかいのサービスが英国,仏国など非常に低下していると思った。夕方のラッシュアワーは朝よりも多少すいていてポツンポツンと空席もある。帰りなのでみなリラックスしておりペーパーバックスやニューヨークポストを読んだりしている。バスの乗客だとより庶民的で となりどうし話を始める人もいるけれども、ここでは個々に各自工夫して電車の中の時間を有効に利用しているようである。ある日ニューヨークに出か けた帰り、スタンフォード行きの電車に乗ると、OL風のトレンチコートをはおった女性が“Excuse me”といって私の降りた席にこしをかけた。背が高く長い金髪をポニーテールにうしろでまとめて活動的な感じがする。仕事の帰りらしく皮のアタッシュケースをさげており全体のムードがいかにもマンハッタン勤めという感じがした。席について一息ついてから革のアタッシュケースから何か出している。何となくマンハッタン勤めのOLのアタッシュケースの中身に興味があったので悪いと思ったがそれとなく見て いたら、ニューヨーク・タイムズとたべかけのパン。あとは空のようでパンを食べ終わるニューヨークタイムズを開きざつと読み流して小さくたたみ、次にえんぴつを出してクロスワードパス゜ルに専念。いろいろ各自工夫して通勤の車内の時間を利用しているがともかくとても落ち着いてすわりごこち の良い中の45分間を有効に使わない手はない。
アムトラック(Amtrak)

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